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森沢明夫「津軽百年食堂」

津軽百年食堂津軽百年食堂
森沢 明夫

小学館 2009-02-28
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「海を抱いたビー玉」以来の、森沢さんの小説(エッセイなどは、この1年で数冊出されていたはずですが)。

「読んだあと、1週間は心がほかほかです」と帯に書いてありますが、本当、森沢さんの本は善意に満ちていて、安心して読めます。

私は、単行本は基本的に外に持ち歩かず、夜にちょっとずつ読むだけのため、1冊読み終わるのに、非常に時間が掛かるのですが、夜寝る前のゆったりとリラックスする時間に、ちょっとずつ読み進めるのに、とてもいい本でした。

「ちょっとずつ読もうと思ったけれど、一気に読んでしまった」と言っている人も多いけれど、私は、じっくり、ゆっくり派、ということで。

以前、「THE 純文学」という感じの小説を書く先生に、小説を見てもらっていたことがあるのですが、その先生は「『一気に読めました』というのが、今は、褒め言葉になっているけれど、『一気に読める』というのが決していいとは思えない」と言われていました。
なんとなく、そんな言葉を思い出したりして。

一気に読まなかったため、たくさん張り巡らされているらしい伏線は、いまいち読みきれませんでしたが、「現代」っぽくない、心に余裕のある時間の流れや、人への思いやりなどが、青森という場所と、満開の桜に綺麗に彩られ、せわしなく生きる現代人の私にも、すっと入ってきました。

もともと、森沢さんのことは、ひすいさんの「名言セラピー」を通して知ったのですが、この本の中にも名言セラピー的要素が満載で、そこもまた、ちょっと嬉しくなったり。
初めの100ページ読むだけで、5つくらい名言セラピー的エピソードが見つかったり。
名言セラピーファンには、そういう楽しみ方もあるかも。

森沢さんは、作品も素敵だけれど、それ以上に、人柄が素晴らしいんですよね。こんなタイプの作家もいるのだ、と驚くくらい。
結局、その小説を心地よく読めるかどうかって、技術うんぬんの前に、作家の持っている魂に左右されるんじゃないか、なんて思ったり。
書き手が普段から人や物事のいいところを見ているのか、悪いところを見ているのか、によって、絶対、作品は180度変わってしまうと思うから。

森沢さんの本は、なんかちょっと心が疲れたときなどにお勧めかな。
ポジティブシンキングを強制するのではないのだけれど、プラスの見方をできるように、いつのまにか心が自然と、無理なく、矯正されている、みたいな。

まだ、小説の中で一番美しい桜は、三島由紀夫の「春の雪」の描写だと私は思っているけれど、そういう、どこかゆがんでいて、痛みがあって、切なくて、苦しくて……そんななかだからこそ感じられる刹那的な美しさ、だけではなく、もっとあったかくて、安心できて、まっすぐで、純粋で……だからこその美しさ、も、いいね。
なんて思える自分は、ちょっと成長してきているのかも、などと、ほくそ笑んでみたりして(笑)

2009/04/24(金) | 小説の感想 | トラックバック(0) | コメント(2)

「天使の代理人」山田宗樹

天使の代理人〈上〉 (幻冬舎文庫)天使の代理人〈上〉 (幻冬舎文庫)
山田 宗樹

幻冬舎 2006-04
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「嫌われ松子の一生」に続き、山田さんの作品をまた読んでみた。
 やっぱり上手い!
 
 好きな作家というのは、もちろんたくさんいるけれど、大体は「〇〇の部分にちょっと不満はあるけれど、でも、やっぱ、いいいんだよね~」という「好き」。
 でも、山田さんの作品は、文句のつけようがなく「上手い」。
 しかも、その上手さは、数をこなしたあとに身につけた職人的(だからこそ、どこか人工的。たとえば重松清さんとか……)な上手さではなく、個性とか主張とか深さとかそういうものとも、しっかり共存した上手さ。
 去年は、伊坂幸太郎さんに出会い、一目ぼれするかのように、その作品にはまり、1年でほとんどすべての伊坂作品を読んだけれど、今年の一番の出会いはこのまま行くと、山田宗樹さんの作品かもしれない。

「天使の代理人」は、一言で説明すると「中絶」がテーマの話。
 で、基本的には、「中絶反対」の立場で書かれている。
 ただ、独りよがりの、声高な主張なわけではなく、「助産婦として中絶の補助をし続けた罪悪感から、中絶反対の活動を始めた五十歳くらいの独身女性」「医療ミスでせっかく授かった子供を中絶させられてしまった二十代の女性」「迷いなく、あっさりと中絶をした二十歳の学生」「銀行でしっかりとしたキャリアを築いている三十代後半の女性」など、色々な立場、様々な考え方、価値観をもった女性の視点を使い分け、ある意味では、淡々と、論理的にストーリーを展開する。

 その、本当はあるのかもしれない主張の熱さと、感情的にそんな「主張」に流されない計算された物語の構成が、本当に上手い。
 すべての人がきちんと生きていて、リアリティがある。テーマは重く、笑いはないけれど、だからといって希望がないわけではなく、みんな悩みながらも、どこかで間違った選択をしながらも、基本的に心が綺麗だから、救いがあって、読後感はいい。

 この人間の書き方の上手さは、乃南アサさんにも似ている。
 乃南さんも、ミステリー作家ではあるけれど、いわゆるミステリーではなく、なんのトリックも、どんでん返しもなくても、「感情移入」だけで読ませてしまうところがあるけれど、そんな感じ(乃南さんの傑作は、「風紋」。犯罪被害者の家族をひたすら追った話だけれど、主人公が実在の人物に思えてならなかった。読み終わってしばらく経っても、あの子、大丈夫かな、と心配しちゃうくらい)。
 でも、男性が、女性だけ五人ほどの視点で物語を書いて、まったく違和感を生じさせないってすごい。しかもテーマが、中絶、妊娠、出産……と、男性が真正面からとりあげるものとは思えないものだというのが。
 後半、話に入り込んでいたので、あとがきを読んで書いたのが男の人だと思い出し、「うわぁ、そうだった。それって、すごい!」と改めて興奮してみました。

 しばらく追い続けたい作家さんです。

2009/04/23(木) | 小説の感想 | トラックバック(0) | コメント(0)

伊坂幸太郎「モダンタイムス」

伊坂さんのモダンタイムスを読みました。

モダンタイムス (Morning NOVELS)モダンタイムス (Morning NOVELS)
伊坂 幸太郎

講談社 2008-10-15
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一番最近読んだのが「終末のフール」、その前が「砂漠」「魔王」「死神の精度」という順だったと思うのだけれど、このあたりの4作は、私の中では「何かが違う……」という感じで、物足りなさを感じていたのだけれど、これは、「これぞ伊坂さん!!」と嬉しくなるような作品だった。

漫画週刊誌に1年間連載したものをまとめた、とあとがきを読んで知ったのだけれど、これだけのものを毎週書いて出せるってすごいな~、と、ただただ感心。

この作品は「魔王」の続きで、超能力の話、政治の話、自分で思考しないと大変な力に取り込まれてしまうという話……などが引き続き語られる(読んでいない人には、意味がさっぱり分からない説明だと思いますが……すみません)。
やはり「魔王」を読んでから読むのがいいと思うけれど、読んでいなくても楽しめるとは思う。

「魔王」の続編ということで、設定は未来。
システムエンジニアだった伊坂さんが、たぶん初めて書いた、SE小説(?)。
システムがさらに発展し、インターネットの世界も進化する……するとどうなるか、という、ちょっとSFがかってもいるミステリー。
展開が読めず、イベントは多発し、飽きずに読める!

ただ「魔王」同様、また、政治などについて、かなり強い主張がある。
私はどうも作家が、メジャーになるとなぜか「主張」しはじめるのがあまり好きではない。
でも、この小説の中には「井坂好太郎」という小説家が登場して、さらにストレートに「主張」するのだけれど、それを読んでいたら、伊坂さんの抱える切実さ、みたいなものも分かって、逆に、全部受け入れられる気がした。
まぁ、マイナーな作家とかアマチュアが間違っても、あんな「語り」をしちゃいけないと思うけど(汗)

その井坂好太郎が小説というのは、音楽などと違って、集団を先導できるものではない、ただ一人ひとりの心に深くしみるものだ、というようなことを言う。
あぁ、なるほどなぁ、と思う。

伊坂さんは本当に頭が良くて、いろいろ考えている人なんだろうな、という気がする。
小説も、きっと、「使命感」を持って書いているんだろうな。
そう思ったら、これからも読み続けたいな、と純粋に思った。

この本は、純粋なエンターテイメントとしても楽しめるし、お勧め。
かなり長く、単行本は持ち歩くには重すぎるのが難点ですが、それ以外は、私にとってはパーフェクトでした!
メインのストーリーとは関係のないところでも、たっくさん伏線を貼っているというか、いろいろな工夫があって、本当、ただただ、すごいです。

2009/01/04(日) | 小説の感想 | トラックバック(0) | コメント(2)

小川糸「食堂かたつむり」

小川糸「食堂かたつむり」を読みました。

食堂かたつむり食堂かたつむり
小川 糸

ポプラ社 2008-01
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三省堂などで平積みになっていて気になっていたのですが、ようやく読めました。

恋人に家具からなにから一式持ち去られ、声まで出なくなった女性が、唯一の親族である母親を頼って実家に帰り、そこで食堂を開く、という話。
母親に対しては憎しみのような複雑な感情を持っているのだけれど、その関係がどうなっていくか、というところに主なストーリーの流れはある。

ともかく食材や、調理の方法が丁寧に描写されていて、好感が持てた。
食べるというのは、命あるものを殺して、それを自分のエネルギーに返るということでもあるけれど、その少し残酷にも思える部分からも目をそらさず書ききっているのがいい。

個人的な感想としては、よしもとばななさんの初期の頃の作品にちょっと似ているかな、という気もする。
全体としてはまじめなテーマを丁寧に書いていっている感じなのだけれど、型にはまり過ぎない、やわらかさや遊びの部分、きれいにまとめすぎていない自由さがあっていい。

中盤から急激にストーリーが展開し、「え? そうなるの?」と、ちょっと作り物めいたものを感じてしまったりもしたけれど、楽しく、心地よく読める作品だったので、それもありかな。

もっと体にいいものを考えて、料理をして、自分の体に取り込みたいなぁ、と思いました。
料理が好き、と言えるひとって、幸せだよな~、などと、ぼそっと呟いてみたりして。

フォントも大きく、すらすら読めるし、全体的にやわらかく、あったかい作品なので、仕事が忙しかった週の週末などに、コタツに入ってゆっくり読むのが最適!
(あ、夏に読んでもいいけどね(笑))

2009/01/04(日) | 小説の感想 | トラックバック(0) | コメント(0)

市川 拓司「そのときは彼によろしく」

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ランキング好調です。
ありがとうございます

今日は小説の感想。
大分前に読み始めたのですが、バタバタしていてようやく読み終わりました。

そのときは彼によろしくそのときは彼によろしく
市川 拓司

小学館 2007-04-06
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これは最近、映画化された作品ですね。
市川さんの作品は「いま会いに行きます」が一番有名だと思いますが、どの作品にも、柔らかい雰囲気があって好きですね。「恋愛写真」も良かったです(これも同名の映画がありますが、市川さんの作品が映画化されたのではなく、映画を見た市川さんが刺激を受けて小説を書いた、ということのようです。中身はもう、まったく別物。私は絶対小説の方がいいと思います!)
登場人物(特に主人公)はいつも、ちょっとさえない、不器用な男の人で、恋愛経験もあまりないのだけれど、その分、愛した一人の人をぼくとつに想い続ける。その純真さが、今の小説・映画のなかではすごい新鮮に思えたりする。
みんな、不器用だけれど、誠実にまっすぐ生きていて、ほっとする世界。
大きな成功をつかむこととか、要領よく生きることとか、そういうのもいいけれど、「幸せ」ってもっと、身近に、当たり前のもののような顔をしてあるものなんじゃないの?みたいな問いかけを感じる。
あと、始まりは普通の日常をつづったストーリーのように見えるけれど、いつも少しずつ「異世界」が入り込んできて、最後の方はファンタジーっぽくなるのも市川さんの作品の特徴かも。
でも、出てくる人物がみんな、ちょっと空想好きな雰囲気の、内的世界を持っているような人たちだというのと、市川さんの文体が不思議な印象を与える比喩などを多用した、ユーモアのある、いい意味で地に足が着いていないようなふんわりしたものなので、違和感なくその世界を受け入れることができる。

まぁ、好き嫌いは分かれる作家かもしれないけれど、私は好きだな。
なんとなく「成功するぞ!」「セレブになるぞ!」みたいな世界に疲れたら、手に取ってみてください(笑)


社労士の方は、千葉県の社労士会に電話をしたら、申請書を送ります、といわれたので、それが届くのを待っているところ。来週、登録に出向こうと思います。お盆休みでしまっていたりしないよなぁ……。
ま、次の記事は社労士っぽい内容にするように努力します(笑)


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2007/08/02(木) | 小説の感想 | トラックバック(0) | コメント(6)

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